取り組み
更新日時:2017年5月26日

2015年度無煙映画大賞と受賞理由

無煙映画大賞作品賞   「ビリギャル!」 監督=土井裕泰

 無煙映画大賞主演女優賞 ももいろクローバーZ  「幕が上がる」 本広克行監督

 無煙映画大賞主演男優賞 鈴木亮平 「俺物語!」 河合勇人監督

 無煙映画大賞監督賞   三島有紀子監督 「繕い裁つ人」

 無煙映画大賞特別賞   「みんなの学校」 真鍋俊永監督

             「ゆずり葉の頃」 中みね子監督

無煙映画大賞の目的

この賞は次のようなことを目的に設けられました

➀ 映画に携わる俳優及びスタッフなどすべての働く人々をタバコの能動喫煙、受動喫煙の害および残留タバコ煙の害から守ること。

➁ 映画俳優の喫煙シーンがきっかけでタバコ依存症などになった人が多いので、喫煙シーンをなくすことで当事者だけでなく観客もタバコの害から守ること。

➂ 2004年に日本も批准し、世界179以上の国や地域が批准している国際条約「タバコ規制枠組条約(FCTC)」第13条(注1)を遵守することを促します。

④ ①、②、③により、映画に関わる人々がいつまでも元気に活躍され、また映画を楽しむことができること。また、タバコのない健康な社会となることを願うものです。

 

選考に当たっては、以下のことを考慮しました。

➀ 2015年中に一般公開された日本語映画であること。ただし、原則として時代劇とアニメは除く。

➁ 作品にタバコの煙がでないこと。PP(注2)としてのタバコも登場しないこと。

➂ 誰でもが楽しめる内容であること。

④ なお、特別賞については今の世の中を反映した作品を選定しています。

(注1)FCTC第13条 タバコの広告・販売促進・スポンサーシップの制限・禁止。従来からある情報提供手段(印刷・テレビ・ラジオ)およびインターネット、携帯電話、映画を含むあらゆる形のニューテクノロジーを用いた情報提供手段による広告・宣伝の禁止。

(注2)PP(product placement) とは、映画やテレビの番組内で、広告主の商品を使い、認知やイメージを高めようとする広告手法。広告主は、商品を製作側に提供する。CMよりも商品に対する視聴者の重要度が高いという長所がある。反対に、商品の表現について製作側から制限される場合もある。製作者側も広告主も共同のキャンペーンが張れるというメリットがある。(経済ビジネス用語辞典より)

 

<受賞理由>

・作品賞 「ビリギャル!」 土井裕泰監督  

どんな生徒に対しても誠実に対応する塾の講師と出会ったことで、小学校4年制程度の学力しかなかった主人公が慶應大学に現役合格するお話です。「自分の可能性を信じる」ことの大切さを魅力的な主人公と、ちょっと笑える脚本で誰にでもわかりやすく伝えました。

 

・主演女優賞  ももいろクローバーZ  「幕が上がる」 本広克行監督  

演劇に取り組む高校生の姿を「ももくろ」のメンバーがいきいきと演じました。高校生の映画というと甘ったるい恋物語が多い中、男子に頼らない元気な女子の姿が爽やかでした。

 

・主演男優賞  鈴木亮平 「俺物語!」 河合勇人監督  

「気は優しくて力持ち」そのものの主人公を原作のコミック通りに肉体改造した俳優魂はすばらしい。すがすがしい男物語となりました。

 

・監督賞 三島有紀子監督 「繕い裁つ人」  

「しあわせのパン」「ぶどうのなみだ」そして「繕い裁つ人」とすべての作品にタバコを登場させなかったことに対して監督賞を授与します。

 

・特別賞  「みんなの学校」 真鍋俊永監督

特別支援学級がなく、どの子も同じように学ぶ学校にはよその学校から追い出されたようないわゆる問題児も転校してきます。教育者だけでなく地域の人々も巻き込んで「みんなで育てる」という教育スタイルは、教育現場だけでなく社会のさまざまな場面で参考になります。  

      「ゆずり葉の頃」 中みね子監督  

八千草薫と仲代達矢という大ベテランふたりを主役にし、穏やかで上品な雰囲気が全編に流れ、大人の観客が安心して観ることができる作品です。

2015年 汚れた灰皿賞(モクモク賞) (注3)

「百円の恋」 武正晴監督 

「味園ユニバース」 山下敦弘監督 

「ジヌよさらば ~かむろば村~」 松尾スズキ監督 

「エイプリルフールズ」 石川淳一監督 

「龍三と七人の子分たち」 北野武監督  

「イニシエーション・ラブ」 堤幸彦監督 

「新宿スワン」 PG12 園子温監督 

以上7作品を代表して、「新宿スワン」に無煙映画大賞汚れた灰皿賞を授与します。

 

(注3)「汚い灰皿賞」(Dirty ashtray award)は喫煙シーンの多い映画に対して授与される不名誉な賞です。

 

2015年度 「日本映画とタバコ」総評 

2015年の日本映画の印象は、明らかなタバコ宣伝映画を除いて分析すると、喫煙シーンはあるものの火をつけるところでカットしたり、ライターの音だけで喫煙を伺わせ たりすることで実際の俳優に対する健康被害は減少傾向にあります。また、子役の前での喫煙はかなり少なくなりました。 

 相変わらず多いのが、「飲食店内」での喫煙です。主役級だけでなく多くのエキストラが安い出演料で健康被害を強制させられていることは大変気の毒です。2020年の 東京オリンピック、パラリンピックに向け、飲食店の完全禁煙化が要望されているにもかかわらず、そういった社会の動きに無頓着な映画製作は時代から取り残されていくのではないでしょうか。

 一方、喫煙シーンはあるものの、喫煙者が後に病気になったり、死んでしまったり する作品はタバコのマイナスイメージが浸透するきっかけになることも期待されます。 実際吸わされる俳優さんには申し訳ありませんが。

 また、一般の映画ファンから喫煙場面が多い作品に「タバコが多すぎる」といった 批判が聞かれるようになったり、評論家が「意味のない喫煙が多すぎる」と批判した りするようになりタバコ規制枠組条約が少しずつ浸透していることの現れと言えます。

 2016年2月1日、WHOは映画に関して、アメリカでの未成年者の喫煙開始のきっかけが37%映画によるという調査結果を例えに出して、以下の勧告を行いました。

*喫煙場面がある作品は「成人指定とする」

*タバコ会社から利益協助を受けていないことをクレジットで明確にすること。(アメ リカ映画の一部ではすでに実施されています。エンドロールの最後に出てきます。)

*ブランド名を露出しない。

*上映前にタバコの有害性についてのCMを流す。(インド映画の一部ではすでに実施さ れています。)  今後映画製作に携わる人はこの勧告を真摯に受け止め、タバコについて慎重に扱ってほしいことを希望します。  

日本では、「たばこ事業法」という悪法があり、WHOが勧告をしても国が積極的にタ バコを規制することは望めません。しかし、国民の一人ひとり、映画製作者の一人ひ とりがタバコの真実を知ることで、上から言われたからではなく、自らの理解で表現演出方法を変えていけるものと信じています。  

2016年も無煙の名画がたくさん楽しめることを願っています。

 

●2015年喫煙シーンの分析(番号は「無煙映画を探せ」映画評のもの)

<ちょっと古い喫煙者のイメージ>

・ 悪人はタバコ(ヤクザ、犯罪者、チンピラ) 12「さいはてにて」 22「暗殺教室」 26「龍三と七人の子分たち」 41「新宿スワン」PG12 46「極道大戦争」PG12 71「起終点駅ターミナル」  72「グラスホッパー」PG12 

・警察と言えばタバコ  16「ソロモンの偽証」 59「アンフェア ジエンド」

・ キャリアウーマンもどきはタバコ  29「王妃の館」 34「百日紅」(アニメ)   本物のキャリアウーマンはタバコなんて吸ってないでしょう。

・ 自由奔放な女はタバコ  10「百円の恋」R15  63「天空の蜂」 71「起終点駅ターミナル」

・ 水商売の女はタバコ  11「最後の命」R15

・ 悩んだとき、辛い時、満たされない人にはタバコ  10「百円の恋」R15  35「六月燈の三姉妹」 38「あん」 60「リトル・フォレ スト夏秋」 61「リトル・フォレスト冬春」 64「お盆の弟」  67「徘徊ママリン87歳の夏」 69「先生と迷い猫」

・ 時代がそういう時代?  70「この国の空」 52「野火」 63「天空の蜂」 71「起終点駅ターミナル」

 

<全く無意味な喫煙>

23「ソロモンの偽証 後篇 裁判」 25「脳内ポイズンベリー」 31「おんなのこ きらい」 33「イニシエーション・ラブ」 42「寄生獣 完結編」PG12  45「ラブ&ピース」 52「HERO」 57「進撃の巨人」PG12  69「先生と迷い猫」  70「この国の空」 76「母と暮せば」 77「海のふた」  78「グッドストライプス」 80「ピースオブケイク」

 

<原発事故後のドキュメンタリーでの喫煙者>  

311から4年が経ち原発事故や避難者を追ったドキュメンタリーはあまり制作されな くなり、観る機会がありませんでした。原発事故が風化され再稼働に弾みがついてしまっている時代を大変残念なことに映画界も反映しているようです。 

 

<問題の大きい喫煙シーン>

・はっきり宣伝をしているFCTC違反の作品(喫煙だけでなくパッケージ、自販機を含 む)  6「ジョーカー・ゲーム」 7「マエストロ!」 18「味園ユニバース」 20「ジ ヌよさらば」 21「エイプリルフールズ」 41「新宿スワン」PG12 45「ラブ&ピー ス」59「アンフェア ジエンド」 63「天空の蜂」 69「先生と迷い猫」 77 「海のふた」  

・ 医療関係者が喫煙  18「味園ユニバース」 19「冬のライオン」 36「おかあさんの木」

・ 子供の前での喫煙  21「エイプリルフールズ」 56「群青色のとおり道」 60「ロマンス」

・ 未成年者が喫煙  16「ソロモンの偽証 前篇 事件」 演出上どうしても必要な場合でも、犯罪ですので「決して真似をしないこと」などの 但し書きを義務付けるべきですね。

・飲食店内での喫煙  1「福福荘の福ちゃん」 8「深夜食堂」 21「エイプリルフールズ」 33「イニ シエーション・ラブ」 38「あん」 40「夫婦フーフー日記」 52「HERO」 73「ボクは坊さん」 74「ギャラクシー街道」 80「ピースオブケイク」PG12  禁煙の飲食店が増えているという現実を映画にも反映させて欲しいものです。

 

<気になる喫煙迷画ベスト5>

41「新宿スワン」PG12  園子温監督 (一140) 20「ジヌよさらば」 松尾スズキ監督  (一100)タバコ自販機  26「龍三と七人の子分たち」 北野武監督 (一70)  33「イニシエーション・ラブ」 堤幸彦監督 (一60) 21「エイプリルフールズ」 石川淳一監督(一50)  次点10「百円の恋」 武正晴監督 R15 (一100)

(マイナスの点数は数字が大きいほど問題のある喫煙シーンが多いことを表しています。)  

 主役が意味もなく度々喫煙する作品は数が減っているだけに大変異様です。制作に参加している企業のコンプライアンスを疑います。また、大手の芸能プロダクション が売り出し中の若手のスターに平気で喫煙させているのは、社員の健康などまったくかえりみず若者を使い捨てにしている悪徳企業と体質は同じです。猛省をお願いします。  

以上、気になる作品はブログ映画評「無煙映画を探せ」を読んでいただき、できればDVDなどで再確認後製作者等へ意見要望苦言をお伝え下さい。

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